在宅介護から見える家族のかたち(56-4)

父が大きな障害を抱えた状態で自宅に帰り、その中で、様々変化していきました。信じられないことに歩くことができるようになりました。そして、笑うようになりました。非日常のような現実から、それまでとは違う新しい日常を再構築できた具体的な理由は三つあると思います。
一つは、家族が父を優先できる状況にあったことです。母は父が倒れた8年後に亡くなりましたが、両親の格闘をそばでみていた娘がいて、その娘が同じように父の暮らしと自分の人生を手放さずに格闘した。言い換えれば、そのことだけを考えればいい状況にありました。そして、その娘にはあっちがだめならこっちがあるさと、次の手を打つエネルギーも、60キロの父を持ち上げる体力もありました。
二つ目は経済面。タイミング的に父が倒れたのが、退職した1年後。退職金で家のローンを完済し、二人の子供は社会人になっていました。老後の資金がエレベーターや家のリフォームに回ったのです。
三つ目はH工務店さんの存在です。父の変化していく体の状態に合わせて、小さな仕事を丁寧にやってくれる方がいたことが非常に大きい。5ミリの床の段差をもっと小さくしたい。手すりの位置をあと8ミリ動かしたい。無理をお願いしました。
これらの条件が重なって、また、ご近所の理解もあって、父は在宅で暮らすことができたのだと思います。