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​はいよ!日記

仕事と在宅介護ー分岐点(22-2)

  • fairfax3939
  • 2017年2月4日
  • 読了時間: 2分

一瞬にして心に焼き付くということが本当にあるんだ、と思ったことがありました。

父が倒れ、その後自宅に戻って数年後、母が入院したことがありました。その間、父は装具なしで歩けるように麻痺足の腱を切る手術をしました。この手術をすることで、足の拘縮がなくなり、装具をつけなくても普通の靴をはいて歩けるようになるのです。入院先はかつて、父と母が片道2時間かけて通院したリハビリ病院。母が入院しているので、父に会いにいけるのは仕事のない週末1日だけでした。

病院についたのは夕方近くでした。夕日が差し込む窓の近くで、父は他の患者さんとは一人離れて車椅子で居眠りをしていました。薄着で寒そうでした。その時見た父は、足がすくんでしまうほど小さく見えました。

「お父さん…」と声をかけると、少し笑いました。そしてほどなく、帰れとゼスチャーするのです。今来たばかりだからと言うと、どんどん車椅子で病院の玄関まで行って、私に帰れと促すのです。夕ご飯まで一緒にいるからと言っても、帰そうとします。

「暗くなるから?」と聞くと、小さく頷きました。

寒いから着るものが欲しいと言うこともできず、他の患者さんとおしゃべりできるわけでもなく、長い一日を一人耐えて、それでも娘が暗い山道を帰ることを心配している。私は泣けました。

私は病院を出ました。よく無事で、灯りのない山道を下ったなと思うほど、涙で前が見えなかった。その日の、父が独り車椅子で居眠りをするうしろ姿と、ミラーに移った、私を見送る父の姿がどうにも私の心に焼き付いて、思い出せばいつでも涙がでるのです。

自分の意思を伝えることが難しい父にとって、他人の中で暮らすということはこういうことなのだと思いました。たくさんのことを仕方がないとあきらめて、孤独と共に生きる、ということです。

(続く)

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